2020年東京五輪開催へ向け、都市景観の向上や災害時の救援・避難路確保などを目的とした「無電柱化」の議論が進んでいる。しかし現実には日本の電柱は減るどころか、毎年増え続けている。「電柱大国」とも揶揄され、総数は2014年段階で3337万本。この4年間の平均では年間7万3000本増えている。無電柱化率は日本で最も進む東京ですら5%。これはソウルの46%、台北の95%、香港の100%などと比べてかなり低い率だ。どうすれば無電柱化を進められるのか、大前研一氏が解決策を提案する。
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結局、無電柱化の問題は、日本に「地方自治」がないことが原因なのだ。不動産の価値を決める最も重要な要素は街の景観だから、どのように自分たちの街の景観をより良くして不動産の価値を上げていくかを考えるのが、自治体の最大の仕事の一つのはずである。なのに、どこかで国任せになっている。
それは憲法第8章の問題でもある。
憲法は第8章の第92条から第95条で「地方自治」について定めている。ただし、第92条には「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」と書いてある。つまり、都道府県や市町村は「地方公共団体」(地方における行政サービスを行なうことを国から認められた団体)であって、「地方自治体」(自治の権能を持つ団体)ではないのである。
このため大半の都道府県や市町村は、自分たちが無電柱化などを推進して街の景観をより良くする主体的な責任を負っているとは思っていないのだ。
また、無電柱化についてはコストの高さも問題とされている。しかし、無電柱化すると決めたら、それは必要な投資であり、日本はその程度の投資ができない国ではないだろう。すでに民間企業やNPOが様々なコスト低減策を提案している。電力会社や通信会社を含めて取り組めば、決して不可能な話ではない。