北朝鮮の圧政から韓国に逃れるいわゆる「脱北者」と呼ばれる人々は年間約1500人にも達する。しかし、“安住の地”のはずの韓国で彼らを待ち受けているのは過酷な生活だ。脱北者支援活動などをしている宋允復氏が解説する。
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脱北者を待ち受ける就労の現実は厳しい。ソウルで旧知の脱北者が憤る。
「同じ労働条件なのに脱北者は外国人扱いで月給は3割少なく、ボーナスは3分の1だ。文句を言えばクビでおしまい。とことん足元を見られる。憲法でも国民と規定され、言葉の壁もない、税金も同じく納めているのに外国人扱いされるのは不当だが、公的機関に訴えたところで時間と費用の無駄にしかならない」
北朝鮮離脱住民支援財団の調べによると、2014年において脱北者は韓国人より週平均3時間以上長く働くのに月収は76万ウォン(7万6000円)も少ないことがわかった。しかも4人に1人が「脱北者という理由で差別された」と答え、日雇い労働者の割合も韓国人より3倍以上多かった。
定着に成功しているかに見える北朝鮮の元エリートも疎外感を覚えるようだ。旧ソ連に留学経験があり、平壌の中枢で多方面の業務を経験した40代の脱北者は、韓国で優遇され政府機関の諮問委員や大学講師を務めているが、こんな本音を打ち明ける。
「競争が激しい韓国社会では学縁、地縁、血縁が固く結びつくが、“よそ者”の脱北者は見えない壁があって排除される。学歴社会の韓国で、多くの脱北者が生活を安定させようと上を目指しているが、いざ博士号を獲得したところで大学教授にはまずなれない。
北朝鮮は貧しいが、『一つは全体のために、全体は一つのために』というスローガンがあり、苦しくとも互いに助け合おうという美風がまだまだある。金正恩体制が崩壊したら、早く北に戻って新たな国家建設に参画したい」