2000年4月にスタートした介護保険制度の運営主体は市区町村。40才以上の国民が納める保険料と、国や都道府県の税金補助を財源とし、自治体から「要介護」「要支援」の認定を受けた65才以上を中心に保険給付が行われる。要介護度別に定められた限度額の範囲内で、介護サービスを1割負担で受けられる。その介護保険制度にはほかにもさまざまな使い道がある。
「実家の改修」もその一つだ。実家を片付ける時、最優先事項は日常生活の安全確保。介護保険制度を使えば、「手すりの取り付け」や「段差の解消」、「転倒防止のための床材の加工・取り替え」など、6種類の住宅改修に介護保険が適用され、原則1割負担で改修工事ができる。
1つの家屋につき20万円(自己負担2万円)という限度額はあるが、数回に分けて利用することもできる。高齢の親が住む実家のリフォームなら利用しない手はない。
もしリフォームしたいところがあれば図面や見積書と一緒に申請書を市区町村に提出し、許可が下りたら工事を行うことになる。工事の料金は一度、施工業者に支払い、その領収書を自治体の窓口に提出すると原則9割の工費が戻ってくる仕組みだ。
『もう限界!! 親の介護と実家の片づけ』の近著がある高室茂幸氏(ケアタウン総合研究所所長)が語る。
「過去に介護保険制度を使ったリフォームを経験したことがある業者に依頼するとスムーズです。市区町村の介護保険の窓口にいけば、そうした業者を紹介してくれます」
高齢者宅に欠かせない「扉の取り替え」にも介護保険が適用される。
「手前や奥に開く開閉式の扉は体のバランスを取りにくく、転倒したり突然開いたドアにぶつかることもあります。また、トイレの扉が内開きだったらお年寄りが中で倒れた場合、ドアが開かなくなり危険な状態になりかねない。そのため居間やトイレの扉は引き戸に改修するのがベスト。将来的に車いすを利用するケースを考えても引き戸のほうが便利です」(高室氏)