実はこの”カニ資源問題”は、国内だけの問題ではない。

 WWF(世界保護基金)が今年6月に発表した「違法なロシア産カニ貿易フロー調査」ではロシアなどは漁獲高規制をしているはずなのに、公式漁獲量の1.69倍という量のカニを輸出している。漁獲高より輸出量が多い――つまりどこかで「カニ・ロンダリング」が行われ、輸出されているというのだ。WWFの調査では、水揚げ量の不正申告や未申告産品の輸送船への洋上積み替えなどがその手法として挙げられている。

 近年ではロシア国境警察による監視が強化されているものの、その目を逃れて、ロシアの密漁船が日本の排他的経済水域(EEZ)で密漁を行うという、日本からすると本末転倒のような事例もあるという。海上という目に見えない”国境”では何が起きても不思議ではない。

 近年では、”オリンピック方式”と揶揄されるほど「獲った者勝ち」になりがちな日本の漁業。カニだけではなく、改善点は山ほどある。「ずわい蟹」、「たらば蟹」は冬の季語だ。四方を海に囲まれた日本人が、周囲の海域の資源を守ることは、食卓や食文化はもちろん、さまざまな日本の文化を守ることにもつながっている。

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