ファッションプロデューサーの植松晃士さんが、世の中の“オバさん”たちが美しく健康に生きていけるよう、様々なアドバイスを送ります。今回は、植松さん流の“前世”についてのお話です。
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皆さま、ご機嫌よう。早いもので今年も師走となりました。毎年のように「お坊さまも先生も走る季節よ」と申し上げてきましたが、本当に日本語というのはよくできた言葉ですね。私など、「師走」と聞いただけで、気ぜわしさに小走りになります。
クリスマスが近づくと、街を彩るイルミネーションが一斉に賑やかになるのも毎年のこと。このまばゆい光を、「わぁ~、きれい」と無邪気に喜ぶか、あるいは「賑やかすぎ」と眉をひそめるか。心の若さを測る基準になると私は思うのですが、いかがかしら。
とはいえ、前世を思い起こせば…“前世”というのは、誕生から30才までを指す、私が考えた“新語”です。
ここのところ、たびたび上越新幹線に乗る機会があったのですが、車窓から見る景色がとてものどかで、しかも長いトンネルが多いんです。ぱ~っと開けていた景色がトンネルで瞬時に暗闇に変わり、そしてまた視界が開ける。これを数度、繰り返すうち、ふいに、「30才以前を、“前世”と呼んで、ひと区切りつけたらどうか」という発想がひらめいたんです。
50才から本当の人生が始まるという考え方を聞いたことがありますが、それなら30才までを“前世”として、それ以降が“現世”とすると、今の私は10代後半で、もうすぐ成人になります。
都合の悪いことはすべて、「私、前世の記憶があまりないの」と言って済ませられるので便利でもあります。
で、この季節、忘れようにも忘れられない“前世”の記憶は、なんといってもバブル華やかなりし頃のこと。あのイルミネーションが点灯されるやいなや、わけもなく気持ちが上がって浮き足立ったものでした。