中年男性のあり方をめぐる議論が盛んだ。最近の40代は若い(子どもっぽい)、アイドルに熱中しているのは中年ばかり、中年の多くは幸せを感じていないのではないかということまで論じられたりする。男性学の視点から男の生き方の見直しをすすめる論客で、『<40男>はなぜ嫌われるか』(イースト・プレス)著者の田中俊之氏に、多くの中年男性が夢見る若い女性との年の差カップルは現実的なのかについてきいた。
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――『40男~』の「大沢たかおだったら合格」という書き出しは衝撃的でした。
田中俊之(以下、田中):常勤する武蔵大学とは別に講義を受け持っている女子大で、40歳前後の男性についてどのような印象を持っているかと質問したことをもとにして書きました。リアルな生の情報をちゃんと載せて、男性に教えてあげたほうがいいと思ったんです。
――中年になってもイケメンなら可という意味でとってしまう人もいるのでは?
田中:「大沢たかおだったら合格」という言い方は、大沢たかおさんなら大満足という話じゃないんです。まあ悪くないと言っているだけ。女子大生からすれば、年の離れた人ではなく、若い男の子とつきあえばいいのですから当たり前ですよね。
――でも40男は、自分だけはまだ若いから大丈夫だと思っている人が少なくないですね。
田中:「若いですね」という若い人からの言葉はお世辞なのに、中年男の多くはその通りだと認め満足する。若い頃の僕は、そういうおじさんたちのことを、見え見えのお世辞なのに信じちゃってバカなのかなと思っていました。でも、あからさまなおべっかを、40男は真に受けやすくなってしまっています。その誤信を防ぐには、自分を客観的に顧みること、自分が若い頃に中年男をどう感じていたかを繰り返し思いだすしかありません。
――ご自身では、どのようにされているのですか?
田中:『40男~』の筆者であっても、よっぽど意識的に自覚を維持しないと難しいです。たとえば先日、学生から「メディアでよく取り上げられている先生と話せて、今日は嬉しいです」と言われて機嫌が良くなり、帰宅後に妻にそのことを話したんです。すると「あなたバカじゃないの? あなたの本に『中高年はお世辞を真に受けるバカばっかりだ』と書いてある」と指摘されました。なぜ嫌われるかを指南しているはずの当事者でさえ難しいですね。
――中年になっても自分の若さと若い女の子にモテようとこだわるのはなぜでしょうか?
田中:何者にもなれなかった自分でも、一発逆転して意味のある人生にできると安易に思いこんでいるからです。
だいたい、若い女の子に価値があるという考えも、思いこまされているだけで、本当に「40男」を含む中高年は若い女の子を好きなのでしょうか? 日本に女性学を紹介した井上輝子先生がおっしゃるように、男性の評価は仕事上の経験と業績しかなく、女性は若さと美しさだけ、というのが日本の現状です。男性も女性も、その評価と本当に自分が欲しいもの、好きなものからは距離があるんじゃないかなと思いますよ。
――とはいえ、モテにこだわる気持ちは捨てられない。
田中:昔、モテたことがないのに、いま、モテるわけがないですよね。その事実は教えてあげたほうが、親切なんじゃないかなと思ってはっきりと書きました。