風邪は万病の元──その理由は2つあるという。1つは「風邪がさまざまな合併症を引き起こす」ということ。そしてもう1つが「風邪だと思っていたら違う病気だった」ということが多いためだ。「ただの風邪」と侮っていると、その裏には死の危険が潜んでいる。
「一見、風邪のように見えるが実は違う病気だった」というケースがある。これは“ただの風邪だ”と甘く見ていた結果、最悪の事態を招くことになりかねないのだ。
風邪は医学的には「風邪症候群」と呼ばれ、喉や鼻など上気道に炎症を起こす病気と定義されている。通常その炎症は感染から1週間ほどで治るもので、熱、鼻水、くしゃみ、咳といった症状は多くの病気の初期症状と似ている。代表的なのが肺炎である。
少々ややこしいが、肺炎には「まず風邪になり、それをこじらせて罹る場合」と、「風邪ではなく肺炎の原因菌に感染して最初から肺炎に罹った場合」がある。だが肺炎の初期症状は風邪とよく似ており、判断がつきにくい。「風邪だと思って甘く見ていたら実は肺炎だった」というケースは多い。
医療法人社団「こころとからだの元氣プラザ」名誉所長で、内科医の高築勝義氏が語る。
「発熱や咳が1週間で治まらなければ、風邪以外の病気を疑ったほうがいいでしょう。例えば肺炎なら胸が痛い、息苦しい、意識が朦朧とするといった症状が続くはずです。
ただ高齢者の場合、こうした症状が表に出にくいので、もし周りから見て食欲が落ちていたり、明らかに元気がなかったり、無口になったりなど普段と違った様子が続いたら、肺炎を疑って医師への診察を促してください」
5歳未満の子供や高齢者、慢性呼吸器疾患や糖尿病など持病のある人、喫煙者やアルコール依存症の人などは肺炎に罹りやすいといわれるため注意が必要だ。
他にも急性肝炎、急性白血病、急性腎盂(じんう)炎、急性髄膜炎など発見が遅れると命取りになる病気の初期症状が、倦怠感や咳、発熱といった風邪の症状と酷似している。