昨年1年間、急性白血病による死亡者は約4300人、急性肝炎でも88人が死亡している(厚労省・人口動態調査)。初期症状を見落とさなければ助かった人もいたのではないか。これらの中には見分けがつく症状をもつものもある。前出の高築氏が続ける。
「急性肝炎は黄疸が出たり、尿の色が濃くなるといった『これは風邪ではないな』と気づきやすい症状を伴います。急性白血病はどこもぶつけていないのにアザができたり、鼻から出血したりしたら要注意。急性腎盂炎は排尿痛や頻尿、急性髄膜炎では重い頭痛や意識障害などそれぞれの病気に特有の症状が出ます。少しでも『いつもの風邪と違うな』と感じた場合には早期受診が賢明です」
その他、肺がんの初期症状も微熱や咳を伴うことはよく知られている。風邪に詳しい大分県済生会日田病院副院長の加地正英氏は、こう付け加える。
「これは私の経験則なのですが、『風邪をひいたみたいです』といってくる患者の多くは別の病気です。風邪の症状が出て1週間以内に急激に悪化したり、1週間経っても症状が長引く場合は別の病気を疑って早急に検査してもらうべきでしょう。もちろんこれはあくまで目安なので、少しでも不安があれば受診をお勧めします」
風邪が引き起こす合併症や、風邪とよく似た重大疾患を見誤らないためにできる一番の対応策は、当たり前だが「風邪をひかないこと」に尽きる。
「体調がすぐれないときは自己免疫能力が落ちているために風邪を引きやすい。風邪の原因のほとんどはウイルスなのでうがいや手洗いはもちろん、乾燥を避ける工夫をしてください」(同前)
たかが風邪、されど風邪。ご用心を。
※週刊ポスト2015年12月18日号