国連PKO(平和維持活動)における「中国の貢献拡大」策に世界が驚いた。そこには悪化した「国家イメージ」を回復する習近平政権の狙いが透けて見える。防衛省防衛研究所主任研究官の増田雅之氏が解説する
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2015年9月、中国の習近平国家主席はニューヨークの国連本部で開かれたPKOサミットで大規模な貢献拡大策を打ち出し、場内から喝采を浴びた。
習主席は「PKOは世界の平和と安全を維持する重要なツール」と訴え、人民解放軍内に8000人規模のPKO待機部隊の創設、諸外国への2000人の要員訓練プログラムの提供、警察部隊の常設化、工兵部隊や輸送部隊・医療部隊の派遣増加を次々と表明。さらに即応部隊を建設するため、5年間で1億ドル(約120億円)をアフリカ連合に提供することを明かした。一個師団に相当する8000人規模の待機部隊を人民解放軍が創設するインパクトは大きい。
今後、PKOの現場では中国兵のさらなる増加に伴って中国人の部隊指揮官や司令部要員も増加し、意思決定に関わるケースが増えることが予想される。また、外国軍と共同で複雑かつ危険なPKOミッションや訓練に取り組むことで、人民解放軍にとっては経験値が大幅にアップするというメリットがある。
世界のPKOミッションのうち、3分の2を占めるアフリカへの関与が強まることも、中国の利点となる。中国とアフリカの強い結びつきは当地の資源獲得や貿易拡大にもつながるからだ。