ピラミッド型の会社組織はもう古い。では、世界最先端の企業のあり方は、どんなものなのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、世界最適化企業のあり方について解説する。
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今年も、東芝、フォルクスワーゲン(VW)、旭化成建材など、独善的な経営陣とピラミッド型の古い会社組織を持つ企業の不祥事が相次いだ。それらの企業がいかに時代遅れかということは、いま世界最先端のビジネスを展開している企業を見れば、よくわかる。
たとえば、スマートフォンのアプリを使ったタクシー・ハイヤー配車サービス「ウーバー(Uber)」。その先進性を米『フォーチュン』誌(11月1日号)などが特集で取り上げているが、創業後わずか5年でグローバル化した同社には、従来の企業が有していた組織や経営システムの概念は存在しない。
ウーバーは、まず「タックス・プランニング」(法人税の仕組み、特徴、計算方法などから合法的な節税計画を立てること)を全地球ベースで行ない、法人税を最も軽減するためにはどうすればよいか、という観点から会社の仕組みを構築している。
もともとはアメリカ・シリコンバレーのIT関連企業に勤めていたトラヴィス・カラニック氏とギャレット・キャンプ氏がサンフランシスコで創業した会社だが、アメリカは法人税率が39%で世界一高いため、法人税率25%のオランダに世界の事業を統括する本社を置き、それにタックス・ヘイブンのバーミューダを組み合わせて節税しているのだ。
たとえば、日本でウーバーのタクシーを利用した乗客がスマホ決済で運賃を支払うと、それは瞬時にサイバー上でオランダ本社の収入になる。運転手に対してもオランダ本社から運賃の80%が取り分として支払われる。利益はオランダ本社ではなくバーミューダに蓄えられ、アメリカにあるウーバー・テクノロジーズ本社は1.45%のロイヤリティしか受け取らないという仕掛けになっている。
これまでのグローバル化は、日本企業であれば、まずアジア各国に展開し、次にアメリカ、そしてヨーロッパ……というように、段階を踏んで国別・地域別に現地法人を設立しながらネットワークを拡大していった。しかし、ウーバーは、現地に子会社や代理店を作ると納税義務が発生してオランダより割高な法人税を払わなければならなくなるから、そういう従来型の組織は持っていないのである。