個人の空き部屋を有料で貸し出す「民泊」をネット上で仲介する「エアビーアンドビー(Airbnb)」も、日本法人はあるが、やはり支店や現地法人のような一般的な企業形態にはなっていない。
世界190か国以上で事業を展開しているのに、日本語HPにはブライアン・チェスキーという代表者名やアイルランドのダブリンにある世界本社の住所と電話番号と問い合わせ先のメールアドレスが書いてあるだけで、日本法人の所在地や電話番号や代表取締役の名前はない。これが21世紀の世界最先端企業の形なのである。
ウーバーやエアビーアンドビーなどの世界最先端企業は生まれた時から“本籍・地球”であり、法人税対策だけでなく、すべての機能について「世界の最適解」を追求するという発想で、最初からそういう仕掛けを構築しているのだ。
その結果、すでにウーバーとエアビーアンドビーの時価総額は推定5兆円に達しているわけだが、アップル、グーグル、アマゾンなども同じような仕掛けを持っている。
つまり、生まれて間もなく本社をアイルランドに移したり、製造をすべて中国企業に委託したり、研究開発や間接業務でサイバースペース上の人材を活用したりして全世界の制度と機能と人をとことん使い切り、すべての業務を「地球上で最適化」しているのだ。それがシリコンバレーの染色体を持った21世紀の世界最先端企業の“常識”なのである。
それに比べると、井の中の蛙の経営陣が内ゲバを繰り返して不祥事や業績低迷を招いている日本企業の形態や体質の古さは、20世紀どころか19世紀の遺物と言っても過言ではないだろう。
※週刊ポスト2015年12月25日号