2014年に期限切れ鶏肉問題が発覚したことで、凋落の一途をたどるマクドナルド。2015年1~9月期の連結決算では、最終損益が上場以来最大となる292億円の赤字。既存店の客数も31か月連続で前年割れと、一向に復活の兆しが見えない。
そんな中、年末には本国アメリカのマクドナルドが、日本マクドナルドホールディングスの持ち株売却を投資ファンドなどに打診しているとの報道が飛び出した。業界内では「いよいよマックも自主再建は諦めざるを得ない」との声がもっぱらだ。
一体、日本のハンバーガー業界はどうなってしまうのか――。フードコンサルタントで「バーガー研究家」の肩書きも持つ白根智彦氏に、マックの敗因分析と新規参入を含めた他チェーンの戦略を“辛口評価”してもらった。
――マックの不振が止まらないのはなぜか。
白根:鶏肉事件で消費者の信頼を裏切ったのはもちろんですが、売り上げはすでに2008年をピークに下がり続けていました。なぜなら、2004年に異業種から原田泳幸氏がヘッドハンティングされマックのCEOに就任して以降、アメリカの意向に沿って経営を推し進めてきた結果、お客さんと向き合うことが疎かになったからです。
店舗のFC化や24時間営業の開始などで組織が疲弊し、マイナススパイラルに入ったと見られます。商品が美味しいかどうか以前に、かつての笑顔で輝いていたお店の体制ではなくなったために、人材も流出しQSC(質・サービス・清潔さ)のレベルが下がっていきました。
そこへきて鶏肉問題が追い打ちをかけたのです。ただでさえ、マック離れが起き始めていたうえに、安心・安全が絶対条件のファミリー層からソッポを向かれてしまったのは大きな痛手でした。
――原田社長からバトンを受けたサラ・カサノバ社長は、鶏肉問題の対応策が後手に回ったとはいえ、「アボカドバーガー」や“エグチ”“バベポ”など200円バーガーなど新商品開発にも積極的に取り組んでいる。
白根:確かにアボカドバーガーは人気食材ということもあり、400円近くと高価ながら収支的には客数のマイナスを客単価でカバーできたのではないかと思います。
ただ、200円バーガーの戦略は疑問です。ボリューム的には価格に見合っていると思いますが、マックの新商品は既存食材の使い回しが多く、味は想像通り。しかも、低価格シリーズで100円ショップのような業態イメージを植え付けていたので、200円商品が高く見えてしまう。今後はベーシックなメニューを一つずつ磨き直すことも必要でしょう。