――これまで国内でマックに対抗してきたロッテリアやモスバーガーは差を縮められたのか。
白根:マックは自滅しているとはいえ、規模的に見れば2社とはまだ大きな差があります。しかし、ロッテリアもモスバーガーも独自路線を歩んでいるので消費者の段階では評価は逆転していると思います。
ロッテリアは、かっぱえびせんとのコラボ、「大勝軒・元祖つけ麺バーガー」等、亜流の商品もやっていましたが、「絶品チーズバーガー」や毎29日にリリースされる「和牛バーガー」など正統派のハンバーガーにチャレンジしているという点は高く評価できます。
モスバーガーは「とま実バーガー」、「カラアゲバーガー」、「モスのぬれバーガー・ナポリタン風味」等アグレッシブな商品を出してきました。ただ、ハンバーガー、サンドイッチの新商品としては手詰まり感も否めない気がします。
――その他のチェーンで注目している店は?
白根:勢力は増えないものの、しっかりとした良い仕事をしているのがベッカーズです。鹿肉の「ジビエバーガー」にもチャレンジしています。「アメリカ産チーズ アイデアメニューコンテスト」のハンバーガー&サンドイッチ部門で最優秀賞に選ばれる快挙もあり、ファストフードのカテゴリーなのにグルメバーガーを凌駕するクオリティは評価できます。
また、マックのビッグマックを意識した“BIG割”を実施したバーガーキングはプロモーション力に長けています。もちろん「BIG KING 5.0」は食べ応えのあるいい商品でしたが、バーガーキングの商品はスタイルが出来上がっているので、話題性に乏しい。そこでイベントに持ち込んで多くの人に食べてもらう戦略で成功しています。
――今年は米国で人気のバーガーチェーン、SHAKE SHACK(シェイク・シャック)が鳴り物入りで上陸し、人気を呼んでいる。
白根:一時は4時間待ちの列が出来ていましたね。私も並んでハンバーガー+ホットドッグ+レモネードを注文しましたが、合計でおよそ1900円。日常的な価格とはいえませんが、青山のイチョウ並木の美しいロケーションなので、いわば観光地価格でも人気になっているのかと……。
シェイク・シャックに先んじてNYのオーガニックハンバーガー、BAREBURGER(ベアバーガー)も自由が丘に上陸しましたが、こちらは一部のオーガニックマニアに受けているとはいえ、やはり価格の高さから日常性に乏しい。
また、ドムドムバーガー運営のオレンジフードコートが健康志向の高い女性をターゲットに新業態のDEANS BURGERをオープン(金沢八景)させました。ここも野菜サンドに近いバーガーが一押しなのですが、いまや「ハンバーガーに健康は求めない」という女性も多い中、どこまで健康志向に訴えかけられるか注目です。
――2016年、ハンバーガーチェーンの差別化戦略は一層激化していきそうだ。
白根:ハンバーガーも「個性」の段階に入ってきたので、チェーンとしての画一メニューではもはや成功は望めないのは確かです。フレッシュネスバーガーが素材とアルコールにこだわった新業態CROWN HOUSEを出店したり、モスがファストフードの最高位ポジションを狙ってモスクラシックをオープンしたのも差別化の一環です。
2016年は引き続き各チェーンとも奇をてらった新開発バーガーや、素材重視の高価格バーガーに力を入れてくるでしょう。しかし、価格・味・サービス・店の雰囲気やロケーションなど、すべてがうまくハマったケースは少ない気がします。
そういう意味では、マックが仮にアメリカ支配から卒業し、組織やQSCの再構築ができるのならば、巻き返しのチャンスは残されていると思います。