●第2位/アルファード・ヴェルファイア(トヨタ)
今年の初めにデビューしたトヨタのフルサイズバン「アルファード/ヴェルファイア」。最上級グレードは700万円を超え、平均売価も販売台数もトヨタブランドの代表的高級セダン「クラウン」を大幅に上回るという、今やトヨタブランドの高級車の“顔役”となっているモデルである。
私は2月、ヴェルファイアの上から2番目のグレード、ZR Gエディションで800kmあまりドライブしてみたのだが、見かけは高級車っぽいのに乗ると商用車のようなフィーリングだった旧型とは似ても似つかない、異様な雰囲気の乗り味になっていた。
防振、防音はプレステージサルーン「センチュリー」を思わせるもの。ハンドリングは直進性はいいが、過大な重量と、性能のリソースをほぼすべて乗り心地に振っている影響からか良くなく、ワインディングの続く伊豆などの道は苦手。ハイブリッドモデルのロングラン燃費は13.1km/Lと、約2.2トンという車重と大きな前面投影面積を考えると良好だった。
このクルマを2位に選んだのは、クルマとしての絶対性能や完成度ではなく、自動車メーカーが自分の思い、アイデアを存分に盛り込む思い切ったクルマづくりをやれているという点だ。自動車ビジネスは高級車から大衆車に至るまで、徹底的に客商売。メーカーにとって、このクルマはこう作るのだという確信を持って開発を行うことは非常に難しいことなのだ。
アルファード/ヴェルファイアはもともと威圧的な外観を特徴としていたが、3代目はそれを通り越して悪趣味の領域に足を突っ込んでいる。が、開発陣には、これこそアルファード/ヴェルファイアらしさなのだと、一点の迷いも持っていない。
インテリアも同様で、夜になるとスイッチ類の透過光がグラスファイバーライトを散りばめるように輝き、天井にも色を変えられるルームイルミネーションが設けられる。これまた下品と断じてしまえばそれまでなのだが、この種のクルマを好きな人はその徹底した演出に心酔することだろう。
マーケットインの究極は顧客の思いや期待をはるかに超えること。それができるのはすごいことだ。知性、センス、審美眼が重んじられるような分野でもそういうクルマづくりができるようになれば、トヨタの強さは一段と増すだろう。