●第3位/エクシーガ クロスオーバー7(スバル)
クロスオーバーSUVの「エクシーガ クロスオーバー7」。このモデルは完全な新モデルではなく、原型は2008年にデビューした7人乗りワゴン「エクシーガ」なのだが、シャシーの大幅改造で最低地上高をちょっとしたオフロードくらいなら十分走れるくらいに上げ、内外装のデザインをリフレッシュしたクロスオーバー7は、国産屈指と言っていい魅力的なSUVに、文字通り生まれ変わった。
最大の美点は商品力と価格の絶妙なマッチングだ。クロスオーバー7のクルマのシャシーのおおもとは2003年にデビューした先々代「レガシィ」のもので、基本設計は古い。が、実際に乗ってみると、路面からの衝撃の吸収、ボディが揺すられた後の収束、高速直進性など、ロングツアラーに要求されるファクターのフィーリングがいちいち素晴らしく、なかでも乗り味の滑らかさについては設計がはるかに新しい「アウトバック」を完全に凌駕しているようにすら感じられた。
スバルの開発陣は、こんなことを語っている。
「BG系(先々代レガシィの型式)は現代からみれば無駄だらけの設計だったのですが、それだけに各所に余裕がある。クロスオーバー7の乗り味をここまで持ってくることができたのは、もちろんシャシーが熟成し切っているというのもありますが、そればかりではありません。
軽量化を限界まで追求する今日の設計でも、きちんと作るべきところは作っていて、数字上は何の問題もないはずなのですが、不思議なことに乗ると違いが出る。その違いは何から生ずるものなのか、無駄と思っているものが本当に無駄なのかを解明してデジタル設計に落とし込めるようになるのが今のわれわれの目標です」
今後のクルマづくりのさらなる進化が楽しみになる言葉だ。素晴らしいのは乗り味だけではない。ルーフレールやプロテクター装着で俄然ワイルドさを増したエクステリア、オレンジの素材を多用することで明るいムードになったインテリアも魅力。旧世代とはいえ先進安全システムのアイサイト2も標準装備だ。
この2.4リットル級AWD(4輪駆動)のクロスオーバーSUVの価格が税込み274万5000円というのは、バリューフォーマネーとしか言いようがない。技術の先進性ばかりがクルマの魅力ではないということを感じさせてくれたモデルだった。
撮影■井元康一郎