大学生の側でも、いちばんの悩みは友達ができないということらしい。
「友達を作るというのは、相手に自分を押し付けることじゃない。いきなり100%の信頼を求めたりせず、ともに過ごす時間、分かち合う時間を作ることが大事ですね」
そのうえで、孤独であることも悪くない、とする。自分を見つめ直し、自分で決める習慣を身につけることが、結果的に相手にとって気持ちのいい人間になれる、と考えるのだ。
争いは、和解をするために生じるもの、というのも目からウロコが落ちる指摘だが、これは人類学的な裏付けがあることだそうだ。
望まれてリーダーの座にまつりあげられたが、じつは「自分から旗を振ってこれをやろうというのではなく、みんなにどんどん発言してもらってまとめあげていくほうを面白く感じるタイプ」だという。
人の観察法や人とのつきあいかたまで、山極さんの手の内をきれいさっぱり明かしているこの本は、「(特定の)誰の期待も背負っていませんよ」という同僚や学生に対しての宣言であるといい、その点でも興味深い。
(取材・文/佐久間文子)
※女性セブン2016年1月21日号