最近は「下流老人」や「老後破産」が話題になっている。たしかに下流老人は一定数いるし、老後破産も起きているが、それは多数派ではない。日本の高齢者の多くは裕福なのだ。実際、バブル崩壊後のデフレ不況が20年続いても貯蓄は増え続け、個人金融資産は1990年の約1000兆円から現在は約1700兆円に積み上がっている。そして、その大半は65歳以上の高齢者が持っている。
この25年で700兆円増えたということは1年平均28兆円で、GDPの6%ほどにあたる。これが市場に出てきて消費に回っていれば、「失われた20年」などなかったはずである。
高齢者は平均すると年金の3割を貯金しているとされるが、地方銀行の人によれば、丸ごと貯金している人も少なくないという。だから日本人は平均約3000万円の資産を残して死んでいくのだ。
その一方で、若者の多くはチャンスがなくて富もなく、今の年金制度では払い込んだ額より少なくしかもらえない、という状況になっている。とはいえ路頭に迷うことはなく、贅沢をしなければ、それなりの生活はできる。
だから少ない収入でも満足することを覚えて「低欲望」になり、自分が生まれ育った20km圏内の地元エリアから出ない人たちや、休日を巨大ショッピングモールで家族そろって一日中過ごす「イオニスト」「ららぽーたー」が増殖している。
この富の偏在、世代間格差を選挙の争点にして若者層に訴求することができれば、政権を取ることもできるのではないだろうか。
※週刊ポスト2016年3月11日号