このたび出版したエッセイ集『藤原家のたからもの』のテーマは、タイトル通り「宝物」だが、いずれも金銭的に高価なものではない。昔使った料理本、海外旅行で偶然手に入れた雑貨品、息子が着ていた少年野球時代のユニフォーム等々だ。
「主人は、情緒的な文章も書けるし、論陣を張ったりすることもできる。でも私は物語が浮かばないと書けない気がしたんです。今、余分な物は捨てて行きましょうという風潮がありますが、ここに出てきた品々は捨てようと思っても捨てられない。物に触れていると、糸で引っ張られて思い出も繰り出されてくるようで」
美子は自分が得た幸せのおすそ分けをするかのように、家族や友人にまつわる逸話を記す。しかし最後に選んだ一品はそんな予定調和を覆す、ある英国紳士からの「ラブレター」だ。
「タイトルを読んだ人は主人からのラブレターだと思うようです。ラブレターは主人にも見せたのですが、ぜんぜん動揺してくれないんです。骨董品に値がついたもんだぐらいにしか思ってないようで、大いに拍子抜けでした」
(取材・文/中村計)
※女性セブン2016年3月24日号