「糖尿病」は予備群を含めれば患者の数は2000万人に及び、日本人の国民病ともいえる。ところが、同じ病名なのに60歳を境に、合併症の危険や治療の常識が変わるという。では、60歳未満と以上とでは、治療法にどんな違いがあるだろうか。
糖尿病の治療において、血糖値の指標であるヘモグロビンA1c(HbA1c)の数値目標が設定されるが、世代によってこの数値にも違いがある。銀座泰江内科クリニックの泰江慎太郎院長が解説する。
「30~50代の若い糖尿病患者はこの先の人生で膵臓をいかに長持ちさせるかが治療のメインテーマです。血糖値が上がってインスリンが大量に分泌され続けると膵臓はどんどん疲弊していく。そのため若い世代ほど長期にわたる厳格な血糖値コントロールが必要になる。
HbA1cは糖尿病患者であれば合併症予防として通常7.0%未満が目標とされますが、若い世代はより厳しく5%台を目標にすべきと考えています」
一方の60歳以上は投薬治療をやる上では、HbA1cの目標値を緩めるべきだという意見が学会で出ているという。北品川藤クリニックの石原藤樹院長がいう。
「“高齢者の目標値は緩めよう”という考えが最近、日本糖尿病学会でも提唱されています。 高齢者は肝臓や腎臓などの機能が低下しがちです。そうすると薬の成分が体外に排出されるのが遅れて、薬が効きすぎるケースがあります。薬で血糖値が下がりすぎることにも問題があります。低血糖によって、様々な健康リスクが生じます」
強い空腹感や眠気、目のかゆみなどの症状は低血糖が疑われるので注意したい。