いくら当代随一人気の高い役者といえども向き、不向きはある。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が、綾瀬はるかについて分析した。
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冬ドラマもいよいよエンディング。突出した視聴率や人目をひく話題が乏しかった感は否めない。「朝ドラ史上最高視聴率獲得か」と騒がれている『あさが来た』が、一気に話題をさらった感じが、しなくもない。
ちょっと気になるのが、出ずっぱりのあの“国民的女優”のこと。その広範な人気ぶりと、しかしどこか掴まえどころのない演技の力。『わたしを離さないで』(TBS系)で主役の重責を果たした、綾瀬はるかだ。
このドラマ、オンエア前は評判上々で意欲作と目されていたが、幕を開けると初回視聴率6.2%。ゴールデン枠民放ドラマで最下位。「“視聴率女王”と名を馳せてきた」綾瀬はるかという「人気女優を配してこの数字とは」と驚くメディアも。
このドラマのテーマは「臓器移植」。「臓器を提供する」という特殊な使命を持つ少年少女の話から始まり、どんよりと重たい空気のせいだったのか。スタート後も話題はなかなか盛り上がらず、数字も伸びず。ドラマの中で、綾瀬はるかの演技はしっかりと抑えが効いていた。台本を深く読み込み一つ一つ丁寧な演技をしている──そんな好印象だった。真面目な性格が滲み出てくるような。しかし、だからといってドラマがオーラを放つわけではなかった。
その連ドラが終わった翌日だ。NHK日本放送協会90周年記念という鳴り物入り大河ファンタジー『精霊の守り人』で、またまた主役として登場。
今度は、バルサという女用心棒役。派手なアクションあり、男のようないでたちで立ち回る姿は、同局の大河ドラマ『八重の桜』を彷彿とさせる。ハンサムウーマン、クールな女性、男まさりの切れ味といったイメージを全面に打ち出そうとした八重。しかし今一つ、お茶の間に浸透しなかった。
では、今回の女用心棒役はどうなのだろう? アクションシーンには、たしかに血の滲む稽古の痕跡を感じさせるものがあった。一生懸命やりました感は、十二分に伝わってきた。でも、手放しで拍手喝采というよりは「綾瀬はるかが、よくあそこまでやったね」という褒め方の方がぴったりくる。
役者には向き不向きがある。その人が持っている個性や資質、良さを作品とフィットさせる必要がある。綾瀬はるかは、いったいどんなタイプの役者なのだろう? もう一度、考えさせられてしまった。
何がウリなのか。何を演じたらハマリ役なのか?