「貧乏な人とは少ししか物を持っていない人ではなく、多くの物が必要で、無限の欲がある人のことです」
“世界でいちばん貧しい大統領”と呼ばれる、40代ウルグアイ大統領(2015年に任期終了)、ホセ・ムヒカ氏(80才)を有名にしたスピーチだ。
2012年、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催された国連会議でのこのスピーチが話題を呼び、時の人となった。
彼は大統領官邸を拒み、妻が持つ小さな農場に住み、月10万円で暮らしている(給料100万円ほどのうち9割を寄付)。水道は通っておらず、1987年製のフォルクスワーゲンを運転。その車にヒッチハイカーを乗せたこともあるという。
「彼の言葉を聞いてハッとしました。日々の生活に追われ、あの人のうちは今年も海外旅行へ行って、とか、あの人んちは子供が有名私立幼稚園に合格して、とか、いつも誰かと比べて、うちも頑張らなくちゃ、って焦って…でも、どこかでずっとむなしさもあった。彼の言葉に救われた気がします」(都内・45才・主婦)
来日したムヒカ氏は4月7日、東京外国語大学での講演会を開催した。「家庭をもって家族を幸せにしたいという気持ちがエゴ、貧困につながるのでは?」と問われると、こう答えた。
「例えば私は自分のパートナーとともに世直しのために挑みました。そのため子供を持つ余裕なんてなかった。私たちは小さな町に住んでいます。そこにはさまざまな若者がいます。私たちは彼らのために学校を作ろうと思っています。そして彼らに国を譲るつもりです。本当の子供はいませんが、彼らがいます。もう少し年を取ったらわかりますよ」
裕福な家庭に生まれたが、ムヒカ氏に寄り添う人生を選んだ妻で国会議員のルシア氏は、夫の言葉に涙をぬぐった。