社会学者エズラ・ヴォーゲル氏が『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を上梓したのは1979年。同書は日本人が戦後抱き続けた欧米に対する過度な劣等感を払拭させた。あれから37年、不況が常態化し、隣国・中国の成長を目の当たりにするなか、再び我々は自信を失いつつある。今回、ヴォーゲル氏に依頼したインタビューテーマは「2050年の日本」──世界的権威は、日本の行方をどう見ているか。
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今、日本では様々な問題が指摘されており、日本の将来を懸念する声が多く聞かれています。しかし、私は、それほど深刻なものだとは思いません。世界的に見た場合、日本はとても良い社会だからです。確かに、今後、人口が減少していくことは問題ではあるでしょう。解決策として、労働者人口が高齢者人口を支えるためのシステムを作る必要はありますが、例えば、人口が9千万人になったところで、国土の大きさを考えればそれほど問題はない。
自殺者やひきこもりの増加という問題もありますが、社会秩序の素晴らしさでは、日本には比類なきものがあります。私は、10年前から、自宅で、毎月、60人の学生を集めて塾を開き、日本の将来について勉強する場を設けているのですが、参加している日本人学生の姿勢には感銘を受けています。お互いにリスペクトし合い、人の意見に真摯に耳を傾けてくれるからです。一方で、中国人学生の方は、野心はあるものの、利己主義が強い傾向が感じられます。
社会秩序の素晴らしさゆえでしょう、日本人学生に「将来どこに住みたいか?」ときくと「日本」という答えが返ってきます。一方、中国人学生の回答は「米国やオーストラリア、カナダ」です。
中国は経済力では日本を超えましたが、貧困問題や環境問題を抱えて、不安を感じている人が多く、住み良い国ではないからでしょう。反対に、日本は、世界的にみても、格差は小さく、中産階級が多いとても住み良い国なのです。