薄毛の原因は、遺伝的要因、ホルモン、ストレス、加齢、睡眠不足、アレルギーを含む免疫疾患などがあり、人によっては、複数の要因が重なっていることもある。近年は男性だけでなく、社会進出が進んだことで、薄毛に悩む女性も増えている。
従来の薄毛治療は、男性型薄毛に対するAGA外来治療や植毛のように、髪の毛だけをターゲットにしていた。それが最近では、髪の毛とそれが生えている頭皮の細胞の活性化により、毛髪を再生させるという考え方を基本にした、新しい治療が始まっている。開発したHARG治療センター桜花クリニック(新宿区)の福岡大太朗院長に聞いた。
「私は20年以上、細胞から出るサイトカインの研究をしています。サイトカインとは、細胞から細胞への情報伝達の役割をするたんぱく質です。サイトカインを外から注入すれば、眠っていた細胞や組織が活性化し、毛髪が再生するのではないかと発想したのがHARG治療です」
サイトカインのサイトは細胞、カインは作動物質という意味のたんぱく質で、インターロイキン、インターフェロン、造血因子、増殖因子、細胞傷害因子(TNF-α、TNF-β)などの総称だ。免疫細胞から産生し、対応するレセプター(受容体)を持つ細胞に作用して、細胞の増殖や分化、活性化を促している。
サイトカインを利用した組織再生は、2006年頃にヨーロッパでアンチエイジングのための皮膚再生に対して始まった。しかし、毛髪の場合は皮膚より難しい。毛根が活性化されれば毛は伸びるが、次の毛が生まれなければ毛髪は減る。頭皮が再生すれば、髪が生える土壌が豊かになり、毛髪が育つ。つまり、頭皮と毛根の両方の細胞が活性化しないと毛髪は再生しない。