HARG治療に使用するサイトカインは、幹細胞の培養液中に大量に含まれている。そこで、ウイルス感染や既往歴のない20歳前後のドナーから採取した脂肪組織の中の幹細胞を培養し、上澄み液を集め、凍結乾燥して治療用薬剤を作成する。
治療では、外来で薬剤を直接頭皮に注射する。注射は原則として4週間に1度接種し、平均で8回程度行なう。
「この治療は、患者の眠っている細胞を起こして働かせます。年齢が上がると細胞自体が減少してくるので、若い人の方が効果が出やすい傾向にあります。また薄毛の原因は人によって様々で、免疫疾患が原因の場合は、効果が得られにくいこともあります。さらに、薄毛になってから時間が経過した場合は、細胞を活性化させるのに時間がかかることもあります」(福岡院長)
現在、幹細胞増殖やiPS細胞での再生治療の研究が進んでいる。細胞を利用する再生治療には、多額の費用と安全性を担保した設備が必要だ。しかし、将来的には毛髪に限らず、幹細胞やiPSで細胞を増やし、サイトカインで活性化させる再生治療の可能性も期待されている。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年4月29日号