「水浸法を使った私の挿入時間の多くは、2~3分です。痛みを訴える人は、ほとんどいません。しかし、腸は個人によって長さや形が違い、中には腸が長い方や、ねじれている方もいます。こういう場合は、挿入に少し時間を要することもありますけども、たいてい10分以内です。鎮痛剤を併用することもありますが、そういう方は全体の5%程度です」(後藤院長)
近年は大腸内視鏡検査に際し、鎮痛剤を用いた無痛検査を実施する医療機関が増えている。そうした風潮に対し、院長は警鐘を鳴らしている。鎮痛剤によって、患者が痛みを感じないために、スコープを押しすぎて腸に穴を開けてしまうこともあるからだ。
大腸がんを減らすためには、大腸検査の実数を増やすしかない。院長は水浸法普及のため、各医療施設に出向いて医師に技術指導を行なっている。
この4月には、初の水浸法の治療技術をまとめた著書が発行される。水浸法が大腸内視鏡検査のスタンダードになり、痛みから解放される日も近いかもしれない。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年5月6・13日号