タレントの大橋巨泉(82)は1999年に緑内障と診断され、度々メディアで失明への恐怖を語ってきた。2014年放送のNHK朝ドラ『花子とアン』で仲間由紀恵(36)が演じた蓮子のモデルである歌人・柳原白蓮は、晩年に緑内障を患って両目を失明した。その時の辛さをこう歌に詠んだ。
〈月影は わが手の上と 教えられ さびしきことの すずろ極まる〉
民進党の柿沢未途衆院議員の母で、「緑内障フレンド・ネットワーク」代表の柿沢映子氏(77)は、49歳で緑内障と診断された時、既に左目は失明し、右目の視野も奪われ始めていた。
「異変に気付いたのは診断の数か月前でした。車の運転中、センターラインをオーバーしたり、縁石に乗り上げるようになったのですが、老眼が進んだだけだと思っていた。視力が悪くなるわけではなく、視野が欠けるだけなので、上や下を向けば見えるんですが、ついにはあるはずの信号まで見えなくなった。それで運転をやめました。
その後、友人の勧めで眼科を受診した際に視力検査で右目を覆った途端、目の前が真っ暗になった。『明かりを消されちゃ見えないわよ』って言ったら、『電気、点いてますよ?』と言われてやっと事態を把握した。
失明まであっという間だったので、正直、恐怖を感じる間もありませんでした。いま何とか右目の視野は1割残っていますが、いつも針の穴を通して物を見ているような状態です」
緑内障の最大の問題は、1度欠けた視野は回復しない点だ。そのため緑内障と診断されても、進行を抑制する以外の処置はない。にもかかわらず、初期の自覚症状がほぼないところに怖さがある。
前出の多治見スタディによると、緑内障患者のうち、9割は自分の病気に気付いていなかったという。初期状態では進行していないもう一方の眼や脳の働きによって全てが見えているかのように補正してしまうため、緑内障と分かった時には末期だったという例は少なくない。
※週刊ポスト2016年5月20日