モテ車を解説する「週刊ポスト」連載の「死ぬまで カーマニア宣言!」。これまでにクルマを40台買ってきたフリーライター・清水草一氏(54)が、1990年に日本初のスーパーカーとして登場し、人気を集めたホンダ・NSXのいまについて解説する。
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ご同輩諸君。今から26年前、諸兄は御年いくつであっただろう。不肖私は28歳のカーマニアであった。バブル期、日本は空前のスポーツカーブームに沸いた。1990年、その真打ちとして登場したのが、日本初のスーパーカー、ホンダ・NSXだった。
当時NSXに乗っていると、真剣にスター気分が味わえた。なにしろ道行く人がみんな振り返る。もちろん美女もNSXなら大喜びだ。温泉ドライブも一発OKだっただろう。無念である。
いち早くNSXをゲットした私の先輩は、青山通りの信号待ちで窓をコツコツされ、バブル紳士に「このクルマ、売ってくれ!」と懇願されたという。前々号で書いたように、なにせ納車4年待ちの大スター。美女にもバブル紳士にもモテモテのNSXであった。
ところでそのNSX、実際乗るとどうだったか?
あくまで私の印象だが、あまり面白いクルマではなかった。スーパーカーとしては乗り味がフツーすぎ、なによりエンジンが面白味に欠けた。全体として性能はいいがそれだけで、情感に訴えてくる部分が薄かったのだ。美女で言えばマネキン系だろうか? その点、同じ時期に登場したユーノス・ロードスターや日産・スカイラインGT-Rは情感満点で、生身の美女の感覚があった。
当時、NSXを高く評価したのは、レーサーやレーシングカーの開発者である。彼らにとっては乗り易さ(扱い易さ)こそ正義。その方が速く走れるからだ。NSXはその正義に沿った初めてのスーパーカー。当時のフェラーリやポルシェは実に乗りづらいクルマだったが、NSXの影響でクルマ作りを改めたと言われる。現在のフェラーリやポルシェがそこらの美女でも運転できるようになったのは、NSXが遠因であった。
そのNSX、26年ぶりに新型が登場する。アメリカではすでに今年の2月から受注が開始された。日本でも夏あたりから受付が始まるようだ。