今、欧米で大流行中の健康法が日本でもブームとなっている。「グルテンフリー」という小麦を摂取しない食事法で、頭痛、めまい、下痢など、様々な体調不良が改善されるという。
ブームの火付け役となったのはテニスプレイヤーで、目下世界ランク1位を独走するノバク・ジョコビッチ(28)だ。彼は著書『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)で、自身の成功が食事改善にあると告白している。
過去、幾度となく試合中に昏倒するなどの体調不良に見舞われていた彼が、パンなどの小麦製品を断つ「グルテンフリー」による食事法を実践したところ、健康体を取り戻すとともに、集中力なども増し、ついには世界最強の座を占めたというのだ。
ジョコビッチが実際に食べているグルテンフリーメニューのレシピなどが掲載された同書は、「昨年4月の発売から話題となり、現在までに12万部を売り上げています」(担当編集者)という。
グルテンとは小麦や大麦、ライ麦などの胚乳から生成されるたんぱく質の一種だが、これを抜くことで、なぜ健康になれるのか。成城松村クリニック院長の松村圭子氏が言う。
「昨今では、グルテンにより小腸の働きが阻害され、栄養を吸収できなくなる『グルテン不耐症』の患者が増えています。命にかかわる深刻な免疫疾患で、現在アメリカでは約200万人、133人に1人が罹患していると言われています。小麦食が進んでいる日本でもアメリカと同じか、それ以上の患者がいてもおかしくないと推測されています」
ジョコビッチの体調不良はグルテン不耐症が原因で、グルテンフリーが大きな効果をあげた。彼のように重篤な病気でなくても、小麦を抜くメリットはあるという。
「小麦に含まれるアミロペクチンAは、砂糖以上に血糖値を急上昇させます。食事中に急上昇した血糖値が、食後には急降下するため飢餓感を覚え、間食したくなり結果的に肥満を招く。さらに血糖値の乱高下により、疲れが取れない、すぐイライラする、頭痛が続くなどの慢性的な不調の原因にもなるのです。
また、グルテンに含まれるグリアジンというたんぱく質成分が、脳に快感を与えて食欲中枢を刺激。食べるほどに脳がグルテンを欲しがり、さながら小麦中毒のようになってしまう人も増えています。この厄介な“小麦スパイラル”から抜け出せば、メタボや慢性の体調不良と決別できるのです」(松村氏)