一方で厳しさを指摘する選手も少なくない。MVP3度のA・プホルス(エンゼルス)はこう口にした。
「MLBは専門の役割を持った選手が25人の登録メンバーを争う競争社会。二刀流が不可能とは言わないが、打者なら打者、投手なら投手として極めていく世界だ」
プホルスの同僚で現役最高のオールラウンドプレーヤーの呼び声高いM・トラウトも、「僕は高校時代に投手と遊撃手をやっていたけど、二刀流は考えもしなかった。メジャーのレベルの高さやケガのリスクなどを考えると非常に難しいからだ」と語る。
否定的な見解に共通する理由は、故障のリスクだ。ゴールドグラブ賞を3度獲得したメジャー屈指の名外野手、J・ヘイワード(カブス)は「二刀流を捨てなければメジャー入りも厳しくなると思う」と言う。
「二役をこなすなら、練習量も倍になる。体力を消耗すればケガのリスクも高まる。ナ・リーグでもDH制の採用が議論されているが、これも打席に入った投手の故障が増えてきたからだ。そんな時代に球団も二刀流を認めないだろう」
エンゼルスのクローザー、H・ストリートはこんな言い方で疑問を呈した。
「見るのは面白い。でも、やるのはお断わりだ。メジャーにも二刀流をやれそうな投手は何人もいるが、皆、その後のキャリアを考えてプロ入りと同時に投手に専念した。投手と打者を両立するなら2倍、いや2倍では済まない体力を使う。どちらかに専念すれば20年プレーできるのに、10年で終わってしまうということだ」
■リポート/出村義和(スポーツジャーナリスト、J SPORTS MLB中継解説者)
※週刊ポスト2016年6月24日号