1955年から1965年に生まれ、かつて“新人類”と呼ばれていた世代の男性が、どうも子供っぽく自分本位であると指摘されることが多い。昨今の不可解な事件では、この世代が逮捕される例が目立つ。これなどは典型的な例だろう。
「盗んだ玩具の売却代金で怪獣のフィギュアを買おうと思った。ショーケースのガラスが開いていたので盗めると思った」と古物商『まんだらけ』で万引した事件で、東京・中野署は50才の男を逮捕した。(2014年8月)
精神科医の香山リカさんは、彼らを「50オトコ」と命名、近著『50オトコはなぜ劣化したのか』(小学館)も話題となった。
50オトコは、いわゆるマニュアル本が流布した時代に青春を過ごした世代だ。デートにはカルチャー誌に載っていたフレンチやイタリアンへ行き、「オンナは雑誌に載っている有名店に連れて行けば喜ぶ」と考えていた。
そしてどうやら、そのマニュアル主義を今も引きずっているらしい。男性誌では、SEXしかり、病気の対処法しかり、マニュアル的な内容の企画がいまだ多いのだ。
もちろんオンナも同じ華やかな時代を謳歌してきた。しかし、決定的に違うものが両者にはあると香山さんは言う。
「オンナは、結婚妊娠出産などを経験することで、男性よりも劇的に自分の役割が変化していきます。その過程で、いつまでも自分自身が子供ではいられないことを悟るのです。ところが、オトコはそれに気づかず、そのときのままで齢を重ねていってしまい、子供っぽさを“少年の心を持つオトコ”などと勘違いしてしまうことも多いのでしょう」
怪獣やプラモデルなど、お金を積んで大量買いする“大人買い”する人が多いのも50オトコの特徴だと香山さんは言う。
「子供の頃に欲しかったけど手に入らなかったものを、今の年になって買うのは、満たされなかったかつての思いをお金で解決しようとしているのです。実は、マーケティング業界も50代男性のそうした習性に目をつけ、消費プランを編み出しているといわれています」
ある人は怪獣のおもちゃを棚に飾って喜び、ある人は自室にこもって模型作りにいそしむ。自分が楽しむためには時間もお金も惜しまないのだ。自分の欲望に正直だが、一方で、外に向けて発信する力はというと、非常におぼつかない。
強力なリーダーシップをとる60代、70代に先導してもらう癖がつき、振り返れば、ホリエモン(堀江貴文・43才)や橋下徹(46才)のような個性的で自己主張の強い団塊ジュニアにも挟まれ、ついつい調整型になってしまい、自分の意見を発信しなくなってしまった。