広島カープは6月29日、ヤクルトに8-1と大勝し32年ぶりの11連勝を成し遂げ、貯金を16まで積み上げた。2位巨人とのゲーム差は今季最大の9(30日現在)。10連勝を決めた前日の試合のテレビ中継は、広島地区で瞬間最高視聴率46.5%を記録。優勝間違いなしの勢いに、地元は盛り上がる一方だ。
しかし昔を知る赤ヘル党は「まだとても安心できない」(50代会社員)と、喜びどころか悲愴感を滲ませる。現在の情勢は、「20年前の悲劇と非常によく似ている」というのだ。
20年前の1996年シーズン、広島は“悲劇のドラマ”の主人公になった。6月末の時点で首位を独走していた広島は、巨人に最大11.5ゲーム差を引っくり返されて優勝を逃した(結果は3位)。この大逆転劇を当時の巨人・長嶋茂雄監督は「メークドラマ」と名付け、その年の流行語大賞にもなった。しかし、広島ファンからすればトラウマ以外の何物でもない。
1996年シーズンを振り返ってみると、確かに今季と符合する点が多い。1996年の広島も今年と同時期に連勝街道を突き進んでいた。6月23日から7月6日まで怒濤の9連勝。2位中日とのゲーム差は8、巨人とは11.5に広げていた。連勝中に「ある快挙」が達成されたことも共通する。
交流戦最後のオリックス3連戦(6月17~19日)、売り出し中の若手・鈴木誠也は打ちに打ちまくった。まず17日に8号サヨナラ2ラン、18日にこれまたサヨナラとなる9号逆転3ラン、そして19日には特大の10号決勝ソロ。広島選手による3試合連続決勝ホームランは20年ぶり。1996年当時の4番・江藤智以来だった。
それほど好調だった1996年の広島は、なぜ巨人に大逆転劇を許してしまったのか。