芸能

佐藤浩市 三國連太郎とちゃんとお芝居したかった

映画『64』にも主演中の佐藤浩市

 俳優の親子や兄弟が共演することは珍しくない。にもかかわらず、佐藤浩市が父・三國連太郎と本格的に共演したのは映画『美味しんぼ』(1996年)で主人公・山岡士郎を演じ、父でありライバルでもある海原雄山役の三國と向かい合ったときだけだった。映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』から、俳優として大先輩である父との共演の思い出を語った佐藤の言葉をお届けする。

 * * *
 佐藤浩市の父親は映画史にその名を残す名優・三國連太郎だ。

「かつての映画界では、役者は映画会社に従属していました。そういう中において、三國連太郎という人は勝手に他社の映画に出るんですよね。それで締め出されて何年か仕事をしていない時期も現実にありました。

 演者であることを優先するがゆえに、ルールを破れる人を子供の頃から見てきたので、僕としてもやっぱり、演じるということは己に正直であることなんだと思っています。ただ僕は苦労知らずなものだから、それに対する表現の仕方がちょっと稚拙だったところはありますが」

 2004年のNHK大河ドラマ『新選組!』では芹沢鴨、公開が控える映画『花戦さ』では千利休と、かつて三國が演じた歴史上の人物役を演じている。

「僕には『飢餓海峡』はできない。自身が同じ時代の飢餓を経ている、三國さんのあの表現は自分には無理です。

 三國さんの演じた芹沢鴨は、自分でそうしたくないと思ってもそうしてしまう、抗いようもない自分を抱えていて、しょうもない人間ぽさがあった。それが、芹沢鴨という人間を通して感じている僕自身と同じだったので、話が来た時に『やりたい』と思いました。ほとんど方向性は一緒になっちゃうんだけど、一緒な中での自分なりの芹沢鴨をやってみたいと思いました。

 利休の時は表千家にお茶を習いに行ったのですが、その時に茶碗のように丸く、自分がいたいと思った。背中だけではなく、全体の丸さをお茶の中で表現できないかな、と。そうしたら、指導の方が『同じことを三國さんも言ってはりました』と言われて。それはちょっと悔しい想いをしましたね。

 今の年齢で一本だけ三國の役をやれるとしたら『復讐するは我にあり』。クリスチャンとして人に対して壁を作って生きることに何ら抵抗感を持たない、あの三國をやりたい」

 1996年の映画『美味しんぼ』が、父子が本格的に共演をした唯一の作品になっている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン