現状では、テレビや新聞は「社会保障財政を維持するには消費増税が不可欠」という財務省の説明に支配されている。はっきりいって、この説明はおかしい。財政危機に陥ったギリシャの国債金利は一時38%まで跳ね上がったが、日本は政府の借金が1000兆円を超えても国債金利はマイナスのままだ。安倍首相が増税先送りを表明しても、市場から日本の財政は安心だと見られている証拠だ。
年金や医療に回すお金が必要なら、スウェーデンのように企業の社会保険料負担を重くする方法もある。財務省は大企業に不都合な方法には触れず、あえて消費増税必要論ばかり強調している。
英国でもそうだったが、国民投票となれば、政府は判断材料となる詳細なデータを示さなければならなくなる。そうなると、財務省に都合のいい説明しか聞かされてこなかった国民にとって、初めてフェアな議論の土壌が整備される。そのことが何より重要なのだ。
※週刊ポスト2016年8月5日号