人間の体には異物や細菌などを殺し、病原体から体を守る「免疫細胞」が備わっている。そのうち、がんを攻撃する免疫細胞のひとつが、「キラーT細胞」と呼ばれる。
この免疫療法では、キラーT細胞を人体から摂取し、そこに「キメラ遺伝子」というがん細胞から発生する特有のたんぱく質に反応する遺伝子を組み込み、その細胞を実験室で“トレーニング”し、再度体内に戻す。医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが言う。
「簡単にいえば、がん細胞を探し、見つけたら攻撃して殺すようにキラーT細胞を訓練するわけです。この訓練後、キラーT細胞を元の人体に戻すとがん細胞を見つけて狙い撃ちするようになるので、がんの進行を止めることができます」
米国の臨床試験では、進行性リンパ腫を患う19人の患者に対し、11人で完全にがんが消え、2人はがんが縮小した。
早期発見や手術が極めて難しく、投薬治療の体への負担も大きいことから、「サイレントキラー」とも呼ばれる膵臓がんに対する治療効果も確認されている。
「細胞の遺伝子操作」というまったく新しいアプローチはがんに苦しむ患者や家族にとって大きな希望となる。欧米では5年以内の実用化を目指している。
※女性セブン2016年8月11日号