鉄道旅の楽しみのひとつに「駅そば」がある。最近はテーブル席も増えてきたが、やはり立ち食いが主流の「駅そば」は、その駅へ行かないと食べることができない。フリーライターの小川裕夫さんが、チェーン店化が進むなか、個性豊かな人気の「駅そば」についてリポートする。
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鉄道旅行の醍醐味と言えば、車窓を眺めながらその土地でしか味わえない食べ物や飲み物を楽しめることが挙げられる。自動車の移動とは異なり、アルコール類を楽しめることも鉄道旅行の大きなメリットだ。
鉄道グルメと言われて、すぐに思い浮かぶのは駅弁だろう。現在、コンビニの普及で乗車前にコンビニ弁当を買い込む人が多く、駅弁業界全体は苦戦を強いられている。
それでもブランド化に成功した駅弁は入手困難といわれるほど人気を博し、すぐに売り切れてしまう入手困難な”幻の駅弁”もある。
駅弁を非日常的な鉄道食だとすれば、日常的な鉄道食は駅そば・駅うどんということになる。昨今、駅そば・駅うどんは淘汰・画一化が進み、その多くは鉄道会社の系列チェーン店になりつつある。
特に、首都圏ではJR東日本系の駅そば店が多くを占めるようになり、古参の駅そばファンからは「どこの駅でも同じそばなので、駅そばの楽しみがなくなった」といった嘆きも聞かれる。
多くの人が行き交う駅構内は、商売をするには一等地と言っても過言ではない。そんな一等地をみすみす他人に貸してしまうなら、自分たちで商売を始めたほうが儲かる――。そんな考え方から、JRや私鉄各社は駅構内の、それもとりわけ人通りが多く目立つ区画に自社の店を出店させてきた。
立地でアドバンテージを得ている鉄道会社傘下の駅そばに、個人経営のそば店が抵抗できる術はなく、首都圏の主要駅からは名物そば店は次々と消えていった。