1年間で病死で亡くなった人の死因の53.4%(厚労省『人口動態統計月報年計の概況』、2014年)を「がん」「心疾患」「脳卒中」の三大疾病が占めている。その予防や治療に関心が集まるのは当然だろう。
しかし、その先にある「三大疾病にかかるとどのような最期を迎えるのか」までは考えたことがない人も多いのではないだろうか。「がんは痛い」「脳卒中は苦しい」などといった恐怖のイメージばかりが先行しているが、三大疾病の中にも「幸せな死に方」や「不幸な死に方」があることは知られていない。
まず、1年間で36万7943人(厚労省『人口動態統計月報年計の概況』、2014年、以下死者数同)が亡くなる死因第1位(28.9%)の「がん」はどうか。がん自体が痛みを与えるばかりか、抗がん剤治療を開始して脱毛や吐き気と闘っても、治る保障はない。「ポックリ死ぬ」とは対極の闘病生活があるからこそ、誰もが恐れる病気である。昭和大学横浜市北部病院緩和医療科の岡本健一郎・医師が解説する。
「がんの痛みは、がん細胞が臓器の奥深くにあるなど神経に触れることがなければ『炎症性の痛み』であり、モルヒネなど医療用麻薬を用いて緩和することができます。しかし、神経が集中する骨や胸膜、腹膜などにがん細胞が広がると『神経性の痛み』に変わる。直接神経を刺激するので強烈で、モルヒネなど通常の薬物治療では対応が難しい」
「痛いがん」の代表格が前立腺がんだ。5年生存率ほぼ100%といわれ、進行は遅い。排尿障害などの初期症状から「見つかりやすいがん」でもある。しかし、「排尿障害などがないために発見が遅れ、進行してしまった前立腺がんは、骨盤や大腿骨などに転移しやすい」(「がん難民コーディネーター」の藤野邦夫氏)という。3年前に夫を前立腺がんで亡くした山崎美恵子さんが振り返る。