「がん細胞が尿道を塞ぐので、尿を出せない痛みにとても苦しんでいました。亡くなる2年前には肋骨や背骨にまで腫瘍が転移し、ベッドに寝たきりになりました。ほんの少しの咳でも叫び声をあげるほど痛かったようで……最期は寝返りもできず、唯一の楽しみだった野球中継も諦めて、ただ天井を見つめるだけ。可哀想で見ていられませんでした」
前出の岡本医師によれば、骨転移でがん細胞が骨髄の中にまで入り、神経を圧迫する痛みは「ぎっくり腰の人が無理やり背筋を伸ばしたとき」に近いという。
大腸がんは合併症を引き起こすと七転八倒の苦しみを味わう。
「大腸自体は痛覚を伝える神経が少ないため、大腸がんそのものでは痛みを感じにくい。しかし、進行して腸閉塞を起こすと、便の詰まった部分が膨らんで周辺の神経を刺激し疝痛(せんつう=周期的に現われる腹部の激痛)に襲われます」(岡本氏)
大腸がんには精神的にも参る症状が伴う。
「腸閉塞で便が出なくなると繰り返し嘔吐するようになり、胃液だけでなく、腸から逆流した悪臭を発する汚物まで吐くようになった。肉体的負担も大きいが、それを見られることや家族に後始末をさせることが何より辛い」(大腸がん患者・60代男性)
※週刊ポスト2016年9月16・23日号