個人的にずっと気になっているのは、清洲桜醸造株式会社の『鬼ころし』CM。「信長になりたい篇」では、パックに入った清酒『鬼ころし』を手にスーツ姿の男子四人と女子ひとりが、ちょんまげをつけて行進しながら現れ、調子のいい音楽に乗って、踊ったりポーズを決めたり信長になってみたい気持ちを表現。しかし、途中で「そんな器じゃない」とがっくりうなだれ、ストローでちゅーっと飲む、という流れだ。わずか15秒で、信長に憧れながら、あっさりあきらめるまで完了するところもすごいが、なんといってもスーツの女子がちょんまげで平然と踊っている姿が素晴らしい。そして、このCMを長く続けているところも素晴らしい。参りました。
ちょんまげCMの強みは、キャラづくりがしやすいところ。殿様、侍、商人、職人などなど、ちょんまげをつけただけで、昔の人、別世界の人になりましたよ、と宣言できるところだ。別世界の人がまじめな顔でスマホを使ったり、タルタルソースを作ったり、スーツで踊る。このギャップだけで面白い。
また、現代人の姿で商品やキャッチコピーを連呼するより、ちょんまげの人がそれ風のセリフでアピールするほうが視聴者の記憶に残りやすい。テーブルに座った侍姿の名優がまじめな顔でラーメンに感動し、「食べるでござる」と言い切るところに、味が出る。
タレントの新たな顔が見えるのも、ちょんまげの面白いところ。ちなみにプロの結髪さんの話だと、額は狭いより広いほうがちょんまげは似合うとか。そういえば、『淡麗侍』シリーズで、コンペ(合戦)に敗れた高良課長の部下(トレンディエンジェル斎藤)は、落ち武者姿もちょんまげもよく似合っていた。納得。