ただ、お袋の四十九日の法要で東京に来るはずだった妹は、3月11日の東日本大震災で津波にのまれました。突然すぎました。妹の遺体は見つかったけど、義理の弟とお袋の遺骨はいまも行方不明です。

 妹の娘の話では、震災の2日前にお袋が妹の夢枕に立ち、燃え盛る火の中から妹をじっと見つめていたそうです。仲のよい母子だったから、そういうことってあるんだろうなと思いましたね。

 この年になるまでいろいろな別れを経験しましたが、叶うのであれば、自分の最期は、賑やかで楽しい雰囲気の中で逝きたい。

 1950年生まれらしく、プレスリーやビートルズ、三波春夫など、高度成長期に日本が上へ上へと向かったときの音楽が流れる中で、お世話になった方々と握手して、“感謝の挨拶”をしてから旅立ちたい。それはやはり、母に最後の電話で「ありがとう」といってもらえた感激が、自分のなかに残っていることが影響しているのだと思います。

 常々思うのは、「死ぬまで元気でいたい」ということです。母や妹夫婦を次々に失ったように、生きている以上は荒波の連続ですが、へこたれずにコロッとくたばるまで元気でいたいですね。

 たとえ、その望みが叶わず、重い病気になっても、延命治療は受けたくない。“そのとき”が来たら、伝えるべき人に感謝を伝え、母と妹のところへ行きたいと思っています。

●いくしま・ひろし/宮城県生まれ。カリフォルニア州立大学卒業後、TBSにアナウンサーとして入社。1989年に退社して独立、「生島企画室」を立ち上げる。現在はフリーアナウンサーとして活躍中。主な番組は『生島ヒロシのおはよう定食・一直線』(TBSラジオ系)など。

※週刊ポスト2016年10月14・21日号

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