間寛平、67歳。日本で最も有名なお笑い芸人の1人である──。自ら、お笑いは「おぎゃー、と生まれた時からやっていること」と語る芸人魂の持ち主。芸歴47年目を迎えた今もお笑い界の最前線に立ち続けているが、2016年夏、彼は劇場の舞台ではなく東北地方の道の上にいた。
『Run Forward KANPEIみちのくマラソン2016』──寛平自身が企画した、東日本大震災の被災者を支援するイベントである。福島県楢葉町をスタートして被災地を巡り、芸人仲間と襷(たすき)を繋ぎながら、岩手県宮古市までの684.1kmを約2週間かけて走る。道中で付近の仮設住宅などを回り、コントやトークを披露して被災者を楽しませることを目的としている。
「仮設住宅に行くとすごい喜んでくれんねん。“笑う機会があるのはこんな時ぐらい”っていってくれる」
元々熱心な市民ランナーとしての顔を持つ芸人・間寛平が、この活動を始めたのは運命だったのかもしれない。実は東北地方とは不思議な縁があった。
遡ること2008年12月、寛平は「アースマラソン」という一大プロジェクトを始めた。芸能活動を一時休止して、ランニングとヨットでアメリカ、フランス、中国など18か国を巡り、地球1周を走破。ゴールを迎えたのは2011年1月、東日本大震災が起きる2か月前のことだった。
「アースマラソンでは東北を走ってなかったんですよ。東北の方から“なんでこっちには来てくれへんねん”って意見をもらってたんです。やっぱり気になっててね。そうしたらゴール直後に大変な状態になってしもうたでしょ。これは行かんとダメやなって」
そして2012年8月、第1回「みちのくマラソン」が実現する。地震から1年半後の開催になったのは、寛平の実体験に基づく配慮があった。自身も1995年、阪神・淡路大震災で被災し、避難所生活を余儀なくされた。