放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、今、業界が熱い視線を送る、神野美伽の魅力について語る。
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最近、スポーツ紙のベテラン芸能記者やアラフィフ以上の音楽関係者が集まると必ずと言っていいほどこの歌手の話になる。
「なんだか、スゴイことになってるよね」
「改めて、本当にうまい歌い手だと思った」
「50になったのに、キレイだし、カワイイんだよね。ある意味、美魔女だと思う」
「なんとか大ヒット曲に恵まれてほしい」
「いや、あれだけ広いジャンルの歌を豊かな表現力で歌いあげることができるんだから、中森明菜や徳永英明のようにカバーアルバムを作ったら、いいものができると思う」
「そこから話題を作るっていうのは、いいかもしれないね」
などなど、本当に多くの人たちが心から実力を評価し、さらに、まるで彼女のスタッフであるかのように今後の展開を考えている。「神野美伽」についてだ。
彼らの共通点は、10月24日、新宿文化センターで行われた「神野美伽のコンサート2016」の東京公演を観たことだ。
神野美伽は、大阪府貝塚市出身の演歌歌手。87年には『浪花そだち』で、03年には『浮雲ふたり』で『NHK紅白歌合戦』に出場している。これが神野美伽についての“世間の知識”だろう。
だが、近年の神野の活動は、他ジャンルのアーティストとコラボしたり、単身でNYに渡りクラシックの勉強をしてみたり、夏フェスに参加したり…と実に多岐にわたっているのだ。それを凝縮し、披露したのが今年のコンサートだったのである。
冒頭、薄いピンクの振り袖姿で登場し、代表曲『男の海峡』を歌いあげた神野美伽。彼女は昨年8月、夫であり師匠のようでもある22歳上の作詞家・荒木とよひさ氏と離婚しているので、晴れて(?)再び振り袖を着る権利はあるのかもしれない。
だが、歌い終えて袖に入り、数秒後、ステージに戻ってきたときには年齢相応の渋い着物に着替えてきた。つまり早着替えだ。
2曲目の『浮雲ふたり』については、「夫婦を歌った歌」と自虐的に紹介。離婚したことをスマートに直接ファンに報告した。
このように、冒頭からサービス精神旺盛な演出や大人のトーク、そして抜群の歌唱力とパンチ力で歌いあげる神野に場内からは割れんばかりの拍手が巻き起こる。
長年応援し続けているファンには「コンサートで聴きたい」という思い入れの強い曲というのが必ずあるそうだが、これが人それぞれ異なるのが神野の悩みだとか。「なぜ、あの歌を歌ってくれなかったの?」「あの歌がナマで聴きたくてコンサートに行ったのに」と後から手紙やメールなどで心中を明かすファンのために、ワンコーラスずつメドレー形式で神野は歌う。