どんなに不幸なことがあっても、どんなに辛いことがあっても「私は負けない」──。一般のかたから寄せられた手記を、原文にできる限り忠実に再現いたしました。離婚後に夫が自殺した石岡恵美子(東京都・41才)の場合──。今回はその続きをお届けします。
【前回まで】
私が起業した会社がうまくいくにつれ、“主夫”になった夫とのセックスが苦痛になった。3人の子供のため、離婚を避けようとしたものの、新恋人ができてしまう。「男ができたから離婚してください」と告白すると、夫は離婚に応じた翌月、首吊り自殺をした。
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◆彼氏がいる後ろめたさで夫に買った500万円の車
私の恋人、Oさんは結婚前の元カレです。偶然に再会してからは、仕事場の行き帰りに必ず彼の古いマンションに立ち寄り、母親でも妻でも社長でもない、女の時間を過ごしていました。
Oさんといる時は何も考えないと決め、それができそうな時期もありました。
だって私が働いて家計を支えているんだもの。だって夫のSくんには、月5万円の小遣いに2万円追加して渡したもの。だって…。Sくんに対する後ろめたさは、財布を開くことで、その時は消えたような気持ちになれました。
テレビの車のCMを見て、「いいなぁ。見てよ、この車の足回り」とSくんに言われて、「いくらなの?」。するりと私の口から言葉が飛び出したのは、いよいよSくんの顔が正面から見られなくなっていたときです。
「500万円強。えっ! 買ってくれるの?」
あのときのSくんの、何とも言えない、怒り笑いのような顔が忘れられません。
「おれがどんなに働いても、この暮らしはできないからなぁ」と、結婚してしばらくは家の中を見回していたSくんですが、慣れとは恐ろしいもの。
あっという間に働かないことに慣れ、子供を保育園に送ったあとは、私が買った新しい車を乗り回して趣味の釣り三昧。
◆あちこちでウソをつき通す苦しさに耐えられない
仕事帰りに会うとOさんは「今のままでいいよ」と言います。私も「子供のため、離婚だけは絶対にしない」と言い続けていました。家にいるSくんには、Oさんと会うためにウソ。じゃあ、Oさんと交わしているこの会話はウソじゃないのか。
順調だった仕事も、決まりかけていた契約が2つ続けてキャンセルになったことがケチのつきはじめ。心配そうに私を見る従業員には、「大丈夫だから」と、取り繕うしかありません。
日に日に私は追い詰められていきました。