『べっぴんさん』のMr.Children、『とと姉ちゃん』の宇多田ヒカル、『マッサン』の中島みゆき、古くは井上陽水や松任谷由実など、NHKの朝ドラ主題歌には大物アーティストがよく起用されている。彼らのような大物になるとオファーを受けるか受けないかは、レコード会社の意向よりも、本人の意思が尊重されるといわれる。今さら売り出したいわけでもない、富も名声も手にした彼らが朝ドラ主題歌のオファーを受けるのはなぜか?
元テレビプロデューサーで上智大学教授(メディア論)の碓井広義さんは、アーティストの情熱や好奇心が根底にあると語る。
「すでに売れてしまったアーティストでも、『たくさんの人に自分の音楽を届けたい、聴いてもらいたい』という情熱は間違いなく持っているはずです。半年にわたって自分の曲が毎朝テレビで流れるという機会は、彼らにとっても経験のないことです。その中で自分の音楽がファンだけでなくファン以外の人たち、子供からお年寄りまで広い世代にどう広がっていくのかを見てみたいという、ある種の実験のような感覚もあるのかもしれません。
物語に合わせて曲を作るという“縛り”があることも、アーティストとしての創作意欲をかきたてられる一要素だと考えられます。決まった条件がある中で自分の世界観も見せる。アーティストとしては腕の見せ所でしょう」(碓井さん、以下「」内同)
そこにはCDが売れるかどうかを超えた魅力があるといえそうだが、ビジネス面でもしっかり成功している。『とと姉ちゃん』の主題歌『花束を君に』も収録されている宇多田ヒカルの最新アルバム『Fantôme』(9月28日発売)は、オリコンCD アルバムランキングで4週連続1位を獲得。宇多田本人が出たいかどうかはさておき、初の『紅白歌合戦』出場への期待も高まっている。Mr.Childrenの『ヒカリノアトリエ』も、リリースされれば音楽シーンを賑わせてくれそうだ。
また碓井さんは、“オファー形式”だからこそ受ける刺激もあるのではないかという。