がん患者にとって難しいのが家族との関係だ。実の親があまりに患者のことを心配するがゆえに、関係がこじれてしまうことも多いというが、さらに複雑にこじれてしまうのは、「義理の親」との関係だ。自身も乳がんを経験し、湘南記念病院で患者の相談にのっているスタッフの山口ひとみさんが言う。
「姑に知られるのが嫌で、子供にも病気を隠している人がいます。子供の口から姑に伝わるかもしれない。それだけは絶対に避けたい、そうおっしゃるかたがいらっしゃるんです」
木島美緒さん(仮名、41才)は「がんにかかって残念だったのは、義理の母の心のうちを見たことです」と打ち明ける。
「がんが見つかったのは3年前。子供が2才の時でした。ただ、ステージIなので深刻な状況ではなく、両親や義理の両親に言ったときも、迷ったり悩んだりは一切しませんでした」
実の親や夫は協力的で、積極的に家事や育児を手伝ってくれた。しかし、姑だけは違った。
「電話でなるべく明るく、『乳がんになったけれど、早期なので生存率が高い』と伝えたところ、 『そんなに明るく言ったって、がんなのよ! わかってるのかしら…』とブツブツ。そんなこと言われなくてもわかっているし、私だって告知を受けた時はショックだったのに…。しかもそのあと、『まだ子供も小さいんだから死んだら駄目よ』って。なんだか私の存在をないがしろにされたような気がしました」(木島さん)
さらに手術後、追い打ちをかけるような言葉を吐かれた。
「“お見合いさせなければよかったわ”とぼそっと言われたんです。それはがんの告知以上にショックでした。このことを聞いた私の両親は悲しむだろうし、夫は申し訳ないと思うでしょう。だから誰にも言っていません。がんの治療はひと通り終わって心も体も元気になりましたが、姑のことが全く信用できません。表向きはうまくやっているんですが…」(木島さん)
木島さんのように、姑から心ない態度をとられたケースは少なくない。治療の副作用や後遺症で不妊になることがあるが、義理の両親から「産めなくなったのなら離婚してほしい」と切り出されたり、「もともと、がんであることを隠して結婚したのではないか」と疑われたりするケースもある。