コラムニストでデイトレーダーの木村和久氏が、近頃気になるニュースをピックアップし独自の視点で読み解きます。今回は、もうすぐ成立の見通しのIR法案、いわゆる「カジノ法案」について考察。
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いよいよIR法案が、近々可決される雰囲気となってきました。「カジノ解禁」だから、ルーレットやバカラ賭博が、どこでもできると思っている人がいますが、それはちょっと早とちりです。
今回のカジノIR法案は、2020年の東京オリンピックに向けて、カジノを含めた統合型リゾートを作るための準備法案です。2020年頃には、統合リゾートの中にカジノがオープンする確率は高いですが、あくまでそのエリア内、つまり、限定的カジノ解禁にすぎないのです。
一部の野党はギャンブル依存症が増えるから、カジノ反対と言っていますが、それは全くナンセンスだと思います。日本は30兆円弱もの売り上げを誇る、世界一のギャンブル大国であり、いまさら統合型リゾートが1~2つ増えても、大勢に影響はありません。ちなみにパチンコの売り上げが約23兆円なのに対して、世界のカジノの総売り上げが約18兆円です。世界中のカジノが束になって戦ってもかなわないパチンコって、すごすぎませんか?
日本のギャンブル依存症の数は、成人の5%弱(厚労省データ)と言われています。これは異常に高い数字で、アメリカですら1.6%、先進国でも2%未満がほとんどです。理由はパチンコ店が全国に、約1万2000軒あるからで、そりゃ、ついつい行きますよね。最近は1円パチンコもあり、実に財布に優しいシステムになっているのです。
その財布に優しいとは、どういうことでしょうか? ギャンブルには「還元率」という数値が設定されています。つまりお金を払ってギャンブルをした場合、平均的にいくら戻ってくるかという数字です。日本で一番優秀なギャンブルはパチンコで、平均85%の還元率となっています。つまり1000円で遊んだら、850円は戻ってくると…。だからパチンコは、負けたような気がしないまま、なんとなく財布の中身が薄くなっていくのです。
次に優秀なのは公営ギャンブルで、競輪や競馬、競艇の類は70~80%の還元率です。最悪なのは、なんと宝くじです。還元率は、約45%とえげつない数字となっています。宝くじは、当せん金付証票法のもとに運営されており、法的にはギャンブルの扱いではありません。一番健全に見えた宝くじが、一番当たらないとは…。道理で宝くじを何万円買っても、儲からないわけです。
それではカジノの還元率はどうでしょうか? 日本にはないので、外国でやっている例を参考にしますと、カード、ルーレット、スロットなどのトータルで、90~95%の還元率となっていて、意外と良心的です。もちろん、ディーラーの技量やマシンの設定で、還元率はいかようにも変えられますが、思ったよりは、ぼったくってません。おそらく、日本で還元率80%を割れば、目の肥えた訪日観光客から、クレームがくるのではないでしょうか。これは欧米の慣習に見習い、還元率を上げて運営せざるをえませんね。