2017年はコース変更があったことから、テレビ中継所も変更になった。新たな中継所は箱根登山鉄道の風祭駅の近くに設置されるため、例年1月2日の風祭駅は5名体制で業務をこなしているが、今年は22名体制で臨む。
同様に通常は8名体制の箱根湯本駅は、臨時雇用の警備員の応援も含めて42名体制を敷く。こうした数字からも、箱根駅伝が箱根登山鉄道最大の祭典になっていることがわかるだろう。
もうひとつ箱根駅伝の名物ともいえるのが、箱根登山鉄道小涌谷駅付近にある踏切だ。かつて箱根駅伝のコース上には箱根登山鉄道と京浜急行電鉄空港線、2か所の踏切が存在した。しかし、空港線の踏切は、2012(平成24)年に線路が高架化されたことで消滅。箱根登山鉄道の小涌谷踏切が残るだけになった。
平時、踏切で停止させられるのは歩行者や自動車だが、箱根駅伝の日だけは電車を止めてランナーを優先する。かつては踏切が下りてランナーが足止めされるというアクシデントも発生していたが、「これまで培ってきた経験などから、電車が踏切を通過するのにかかる時間とランナーのスピードなどを計算し、手動で踏切を開閉しています。ここ十数年はランナーを踏切待ちさせる事態は起きていません」(同)という。単純にランナーが通過するまで電車を止めておくのではなく、そこには熟練の勘と技があるようだ。
小涌谷の踏切は箱根駅伝限定の名所だが、箱根登山鉄道には80‰(パーミル)を超える超急勾配やスイッチバックといった鉄道ファン垂涎の名所が存在する。また通常の鉄道車両は2種類程度しかブレーキを装備していないが、箱根登山鉄道は急勾配を走るので4種類のブレーキを装備している。そのブレーキ裁きを体感できるのも、急勾配の箱根登山鉄道ならではといえる。
白熱したレースの裏では、鉄道会社の壮絶なドラマもある。箱根駅伝を自宅でテレビ観戦する人も多いだろうが、乗り鉄とスポーツ観戦を同時に楽しむ箱根登山鉄道の旅をしてみるのも乙な正月の過ごし方かもしれない。