●演出
ガニ股で歩き、髪を掻き上げ、両手を大きく広げながらしゃべり、目をひん剥いて凝視する、宮本氏の独特な身体的クセ。それらを刈り込まず、上手に使った演出力がアッパレ。音の活かし方も、実に憎い。場面転換と同時にロックのリズムが刻む。
ノンビブラートで、ちょっとシャープにズレながらシャウトする宮本ボーカルが全編に響きわたる。主役の純粋さや透明感を、エレカシの音楽がきっちりサポート。音楽とドラマとの、ユニークなコラボモデルになりました。
●脚本
脚本は『フジテレビヤングシナリオ大賞』第28回受賞作。ここがフジテレビにとっての大きな「希望」の芽かも。ご存じのように坂元裕二、野島伸司から野木亜紀子まで数多くの人気脚本家を輩出してきたこの賞は、若手シナリオ作家を育てるためフジテレビが設立したのですから。
このところのフジのドラマの凋落は、「キャスティング至上主義が元凶」と指摘されてきました。つまり、人気アイドルや人気俳優を主役としてとにかく押さえて、それからストーリーを作っていくというスタイル。
しかし、それでは良いドラマは生み出せないとわかった以上、もう一度、脚本から配役へと「丁寧に物語世界を作り上げていく」原点に立ち戻って欲しい。と思いつつ、『俺のセンセイ』のプロデューサーのコメントを見ていたら……脚本を読んで、主役は宮本さんしかいないと思ったのだとか。
「“言うだけならタダだ!”と体当たりでオファーしたところ、まさか受けていただけるとは思わず、今回ご一緒できている幸せを日々感じながら撮影を続けております」(フジテレビHP)
クリエイター魂のみずみずしい希望の光が、このあたりに差してはいませんか? こうした「ものづくり力」を現場からしっかりと丁寧に育てていけば、きっとフジのドラマは復活するはず。2017年、応援しています。