93才の佐藤愛子さんのエッセイ『九十歳。何がめでたい』が大ヒットとなっている。昨年8月の刊行からわずか5か月あまりで46万部を突破した。
朝日新聞や産経新聞、毎日新聞のほか、数多くの紙誌書評で取り上げられ、佐藤さんにもインタビューの依頼が殺到。こうした「怒濤狂乱」の日々は、作家生活68年の佐藤さんにあって、初めてのことだという。女性セブン新年号に寄せたエッセイで、こう綴った。
〈だからいきなりこういう騒ぎになると居心地が悪くてしようがない。「どうしてこんなに賣(う)れるんでしょう?」と訊かれるが、「さあ? 買った人に聞いて下さい」と答えるしかない〉
東京駅八重洲南口にある八重洲ブックセンター本店に行くと、本書をズラリ並べた上に貼られたポスターの〈めざせ100歳、100万部!〉という大きな文字が飛び込んできた。その下には<いまの日本にはこの人が必要だ! 平成のご意見番にして爆走老人、90歳を過ぎてますます意気軒昂の著者が描く、笑えて笑えて考えさせられる一冊です。>と書かれている。そんな大胆なキャッチコピーを考えたのは、商品企画部の内田俊明さん。
「書店で大きく展開するにあたって、愛子先生には100才を目指していただき、私たちはこの本が46万部といわず、いっそ100万部まで行くように頑張ろう、と(笑い)。なぜこんなに売れているかといえば、タイトルに『九十歳』と、初めて年齢が入っていたことが大きかったのではないでしょうか。
昔からのファンでも、愛子先生が90才を迎えていたことに驚いたファンのかたも多かったようですから。それでも衰えずに元気にわが道を爆走する愛子先生は、他人を怒ったり叱ったりする人がいなくなった今の日本に必要な人で、若い人には新鮮に映り、高齢者には懐かしく映るのだと思います」
とりわけ高齢者の支持を集める理由には、すっかり変わってしまった世相が関係しているのではないかと、書評家の温水ゆかりさんは分析する。