これまで、1メーターで降りる客を“ゴミ客”と呼び、短い距離を告げる利用者に露骨に舌打ちするなど一部でサービスの悪い運転手がいたことも事実だが、今回の料金改定は失われたタクシー市場の拡大を目指して、いわば大手タクシー会社の総意で決定されたもの。値下げによって、サービスの質が落ちるようなことがあってはならない。
そもそも、未来のタクシーは、初乗り料金から距離・時間の経過とともにメーターがカチカチと上がっていく現在のスタイルが継続されていく保障はまったくない。
「すでに一部のタクシー会社で空港までの料金を定額制にしているように、今後はスマホアプリなどを使って料金が事前に確定するような制度や、向かう方角が同じ利用者の相乗りシステムなども検討されている。
また、日本交通の川鍋一朗会長は、自動運転技術の進歩による無人タクシーや、ITインフラとタクシー広告を組み合わせることで、無料のタクシーが登場するといった将来展望も描いている。こうなると、タクシーの適正運賃といった概念は通用しなくなる」(前出・経済誌記者)
格安レンタカーやカーシェアリング、米Uber(ウーバー)のライドシェア(相乗り)などのカービジネスが続々と拡大基調にある今。タクシー業界はビジネスモデルの転換以前に、改めて利用者目線の安全管理や快適性を追求しなければ、ますます“上客”を奪われることになるだろう。