◆みんなカッコ悪い
著者の呉座氏が解説する。
「応仁の乱には、通説にあるような“単純な対立構図”はありません。むしろ『わかりづらいこと』が最大の特徴で、そこに面白さがある。実は、なぜ戦乱が広がったのかもはっきりしないし、最終的に誰が勝ったのかもよくわからない。
また、足利義政が無能だったとか、日野富子が稀代の悪女で我が子可愛さに乱を起こしたといったイメージも、後の時代の軍記物の内容に引っ張られたもので、正確とはいえません」
呉座氏の見方では、“誰も望んでいないのに行きがかり上、広がってしまった大乱”なのだという。
その意味では戦国時代や幕末の維新期とだいぶ違う。戦国大名たちには「天下統一」、幕末の維新志士たちには「倒幕」という明確な目的があった。
「目的達成のために突き進む戦国時代や幕末の英雄の超人的な活躍は、ドラマになりやすい。一方、応仁の乱には英雄らしい英雄がいない。“平凡な”登場人物がみんな右往左往しながら悩んで、迷って、判断ミスを犯す。その結果、京の都が焦土と化す史上有数の大乱になってしまうわけです。
著書が売れたことには驚いていますが、登場人物がみんな慌てふためいていて格好悪いという、映画『シン・ゴジラ』の前半部分のような話が、英雄の活躍物語よりリアルに感じてもらえたのでしょうか」(同前)